普段は気にも留めない小さな段差。しかし、この「小さな差」が、実は建築空間に深い意味をもたらします。段差が生む微妙な変化や役割を考えてみましょう。
■小さな段差の大きな役割
段差には多様な意味や機能が秘められています。例えば、それは「境界線」として、内と外、プライベートとパブリックを区別する役割を果たします。日本の玄関にある段差は靴を脱ぐ場所を示し、家に上がるという行為に文化的な意味を与えています。建物内に入ったときに段差があると、「どっちだ…?」ってなりませんか?また、こういった段差は、時には座る場所となったり、人が入らないようにするさりげない障壁となったりもします。
■封建制度時代の階級シンボル
建築や設計を行う時には、この「小さな差異」の持つ文化的背景や意義を理解することが大切です。ただ単に高さの違いを設けるのではなく、その段差にどんな意味を込めるのかを深く考えなければなりません。
古来、日本の寺社や武家屋敷では、階段や敷居の段差が神聖な空間や身分の違いを明示するシンボルとして機能していたのです。とりわけ、信長や秀吉の時代では1つの部屋から都市のスケールに至るまで、大小さまざまなシンボルによって、その階位が定められていたといいます。SD選書の「日本デザイン論」、「地位のシンボル計画」の章に詳しい記載があります。
現代でも、こうした小さな設計の工夫が空間に大きな影響を与えることがあります。段差は、小さいからこそ「どうでもよい」ではなく、小さいからこそ「意味がある」のです。
■まとめ
たかが段差、されど段差。空間の中で、段差がどのような意味を持ち、私たちにどんな体験をもたらすのか。現代の設計においても、この「小さな境界線」に注目することは、空間デザインに新たな可能性を見出せるかもしれません。
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参考サイト
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