
スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが提唱した「シニフィエ(概念)」と「シニフィアン(音声や文字などの表現)」の概念は、異なる言語や文化が世界をどのように切り分けて認識しているのかを理解する鍵となります。
例えば、フランス語では「パピヨン」という言葉が蝶と蛾を包括するのに対し、日本語では「蝶」と「蛾」を明確に区別しています。この違いは、単に言語表現の違いだけでなく、文化的背景や自然観の違いを反映していると言えるでしょう。
この「切り口の違い」は、建築デザインにも応用できます。異なる文化圏での建築物の形状や色彩、素材の選択には、シニフィエとシニフィアンの関係性が影響を及ぼしています。
例えば、「鳥居」は日本独自の建築要素であり、神社の入り口を示す象徴的な構造物として知られています。
シニフィエ(概念/特徴/イメージ)
「神社の入り口を示す門」「神聖な場所との境界」「朱色や木製の構造物」など。
シニフィアン(文字・名称・音)
「とりい」という日本語の音、「鳥居」という漢字。
鳥居のシニフィエを英語圏で表現する際には、「torii gate」と訳されることが一般的ですが、ここで使われる「gate(門)」というシニフィアンは、西洋文化圏でのアーチや城門を連想させる可能性があります。このため、完全に日本の「鳥居」と同じニュアンスを伝えるのは難しい場合があります。このような違いを理解することは、国際的な建築デザインや異文化交流において重要です。
ソシュールの考えは、建築やデザインにおいて「他者の視点」を取り入れるヒントを与えてくれます。例えば、鳥居のデザインを海外のプロジェクトで取り入れる際、そのシニフィエをどのように伝えるかを工夫する必要があります。他の文化圏のシニフィエとシニフィアンの関係性を知ることで、自分たちの枠組みにとらわれない新しいデザインが生まれるかもしれません。