【120. 建築家の系譜④】
住宅から読み解く建築の系譜
アントニン・レーモンドから吉村順三へ続く系譜をたどると、住宅設計を中心に活躍する建築家たちの深い繋がりが見えてきます。住宅建築を通じて、日本建築界のもう一つの姿を探りましょう。
■レーモンドと吉村順三を起点とした住宅系の系譜
今回は、アントニン・レーモンドと吉村順三さんを起点に、住宅や小規模建築を得意とする建築家の系譜を追います。建築家の系譜①~③は比較的大規模や先進的なプロジェクトに強みを持つ建築家を中心としていますが、この系譜は住宅建築における日本の繊細で高度な設計思想を受け継ぐ人々を紹介しています。
■住宅設計の魅力とその系譜
住宅設計に取り組む建築家は、クライアントの日常に深く関わり、そのライフスタイルに密着した設計を行います。この系譜には、住宅設計を深く掘り下げた宮脇壇さんや、繊細な住宅作品で知られる堀部安嗣さん、また住宅デザインにおいて高い評価を受ける伊礼智さんなどが名を連ねています。宮脇さんは住宅作品「ボックスシリーズ」で知られていますが、住宅に留まらず体育館など幅広いプロジェクトも手掛けており、その幅広い能力がうかがえます。
また、この系譜の中には、韓国近代建築の巨匠として知られる金壽根(キム・スグン)さんの名前もあります。金さんは組織系設計事務所で実務経験を積んだ一方で、吉村順三さんの研究室にも在籍し、住宅設計の思想を学んでいます。
■変化する住宅設計の領域
近年では住宅設計が一般的な人々にも広く注目されるようになり、SNSなどで「住宅アカ」と呼ばれる住宅設計の情報を積極的に発信する人々も増えています。このように住宅設計がより身近な存在になることで、堀部さんや伊礼さんのような建築家が幅広く知られるようになりました。
住宅設計を通じて個々の生活を豊かにすることは、建築家が社会に対して提供できる非常に具体的で身近な価値と言えるでしょう。
■まとめ
住宅設計を軸に建築家の系譜を辿ることは、日本建築界の深く豊かな側面を知ることにつながります。住宅を設計することの意義や可能性を改めて見つめ直す機会となるでしょう。